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管理会社にいたころの話

かつてイダケンはマンション管理会社の社員でした。
入社の理由は、「何となく楽そうだから」。 はい、正直言ってそれが理由のほとんど全てでした。

マンションの管理人って楽そうなイメージがありますよね、 実際はともかく外から見ると。
そうしたのん気な管理人の、いわば親分格に当たるのが管理会社なわけですから、これはもう絶対仕事は楽に違いないと思いました。

たぶん田舎の町役場みたいな感じなんだろうな、と。
時間がのんびり流れているんだろうなと。
上司はきっといつも作業着なんかを着てる人で、お昼にお弁当を嬉しそうに食べているんだろうなと。

そもそも本当に仕事をしているのかさえ怪しいと思っていたぐらいです。

楽だと思った会社の現実

ところが実際は・・・笑ってしまうぐらいに最悪でした。
入社してからわかったんですが、実はうちの会社は当時、社員の総入れ替えを行ったばかりだったのです。 上司1人を除いて、周りは全員右も左もわからぬ新人ばかり。

しかも総入れ替えの理由というのが、前の社員達の仕事ぶりがあまりにもダメすぎてお客さんの怒りを買ったから、なのだそうで・・・。

管理会社の仕事は、要するにマンションのトラブルを住人と一緒に解決していくことなんですが、 どうやら前の社員達はそれとは正反対のことをしてくれた模様。

場当たり的な解決や、いい加減な口約束を繰り返し、現場をかき回すだけかき回し、住人の怒りをMAXにまで高めてからさっさと消え去ったというわけで。 残されたのが私です。ゼロからどころか、マイナス250ぐらいからのスタートでした。

あれは入社して1週間ぐらいでしたか、マンションの巡回に行きました。
1人の女性に管理会社の人かと尋ねられたので、「はい、そうですよー」と答えました。
そしたらソソクサとどっかへ行ってしまって。

「何だろ・・?」と思っていたら、仲間を連れて戻ってくるのです。
取り囲まれて1時間半ぐらい怒鳴られ続けました。もう何が何だか・・・。

イダケン、頑張りました

さて、言わせてください。イダケンはそんな環境で頑張りました。
楽をするために入った会社で、でも頑張ったのです。

他人様に誇れるぐらいの努力をしたつもりです。
自分が頑張れる人間であることを、私は今ここであなたに伝えたい。

最初は管理組合の誰1人として私を信じてくれていませんでした。
いつもいつも怒られました。睨まれました。怒鳴られました。

もちろんつらかったです。でも会社を辞めたりはしませんでした。
偉いです、イダケン。

「住人をここまで怒らせたのはあくまで前任者であって自分ではない」、
まぁそうした思いが救いでした。

それに、お客さんはたしかに怒っていたし会社を始めから信用していなかったのですが、でも心のどこかで、 「この新人はもしかしたら今までの社員とは違うんじゃないのか・・」、とかすかな期待を持っていたと思います。 「どうせこいつもダメだろう。でもひょっとしたら・・・」と。

だからその期待を裏切りたくなかったです。
「自分は前任者とは違う」、とにかくアピールしたい一心でした。 認めてもらいたかったです。

できることは何でもしました。 猫の死骸を片付けたこともあれば、蜂の巣を駆除したことさえあります。 自ら作業服を着て工事にだって参加しました。
住人から頼まれたことは、ほとんど断った記憶がありません。

頼まれるだけじゃないです。
自分からどんどん提案だってしました。

「理事会をもっとたくさん開きましょう!」
「積立金改定しましょう!」
「管理規約見直しましょうよ。私が作成しますから!」

管理会社の社員って普通は頼まれたことさえまともにやろうとしないものです。
でもイダケンは自分から仕事を増やしました。

やっと聞けた「ありがとう」

そしたら、やってみるもんです、少しずつ努力が認められていきました。
時々、住人から「ありがとう」の言葉が聞けるようになりました。

ささやかなことではあります。
でもイダケンにはその程度のことでも嬉しかったです。

一時は修復不能の関係とまで思っていたんですから。
ずっとこんなハートフルな関係が欲しかったのですから。

後にはこんな言葉もかけてもらいました。
「イダケンがいなくなったら管理会社変更だね。」
「あんたがいなくなったら困るよ。」

悪くない言葉です。
今でも何かあるたびに思い出す言葉です。

この仕事が天職です

最後に言わせてください。
管理会社に入った当時、私は自分の置かれた状況をひどく「ついてない」と感じていました。

周りは新人ばかりで頼れる人間がいない。 管理組合との関係は最悪。
何で自分だけがこんな目に、と。

でも振り返ってみれば、この状況があったからこそ自分は管理会社社員として道を踏み外さずにいられました。 もしも仕事の手の抜き方を教えてくれる上司がいたら、もしも組合活動に関心の無い「イージー」な管理組合を担当していたら、 自分はきっと楽な方楽な方へと流れていったに違いないです。(そもそも楽をするために入った会社ですから。)

全力で仕事に打ち込んだからこそ、組合から感謝される喜びを味わうことができました。
「誠実に仕事をすれば感謝してもらえるじゃないか、努力が認めてもらえる世界じゃないか。」
それに気付いてから仕事が楽しくなったし、すっかり味をしめて今ではマンション管理こそ自分の天職と思えるまでになりました。

全てがつながって今ここにイダケンという1人のマンション管理士がいる。
そんな巡り合わせにただ感謝です。読んでくださりありがとうございました。

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