削減の方法いろいろ
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マンションの現状分析が済んだら、いよいよ管理費の削減に取りかかる。
張り切ってどうぞ。
もう1度、削減の手段をおさらいしてみよう。
代表的な方法は、次の6つだ。↓
- 管理会社と値下げ交渉
- 保険を見直す
- エレベーターの点検業者を変更する
- 電気料金を見直す
-
仕様の見直し
(不要なサービスを削る) -
リプレイス
(管理会社変更)
前にも言いましたが、必ずこの6つ全てを行うわけではなく、 マンションの現状や管理組合の要望に応じて、どの手段を取るのかは変わってきます。 それぞれの手段について、順に見ていくことにしましょう。
1.管理会社と交渉
まずは交渉。管理会社に委託費の値下げを頼んでみる。 管理費支出でいちばんデカいのは委託費だから、できればここを削りたい。
値下げしてほしいんですけど、っていきなり頼むの?
まずこっちで契約書を分析すると、10〜20箇所、不備が見つかるのが普通だからさ、 直してくださいを切り口に、価格交渉していく。
手慣れたもんだ。
管理会社は、とりあえず1〜2週間待ってくださいと言い、その後に断ってくることがほとんど。 最初のお願いで素直に値下げしてくれる会社はあんまりない。
そうだろうね。
こちらも引き下がらず二度三度と食い下がり、腹のさぐりあい。
これでダメなら他の会社に見積りとりますよと最後通牒。するとガクンと下げてくる。大体このパターン。
イメージ通りの展開だね。
交渉を成功させるには、相見積りによるリプレイスをちらつかせるのが効果的。 ダメならよそに変えますよ、は切り札といえる。
やっぱそうなんだ。
うん。 リプレイスをちらつかせることなく交渉してくれって管理組合から頼まれることもあって、まぁ頼まれればこっちも引き受けるんだけど、 その場合、成果を出せるかは出たとこ勝負になる。
出せなかったらどうすんの?
期待したほど下がらなかったらどうしますか?と予め管理組合に確認しておくんだ。 全く下がらなかったのにコンサル費用を払うことになるケースだってありうるから。
実際そういうことってあったの?
交渉だけで下がらなかったことはある。前はなかったんだけど最近は管理会社が強気だから。 今は大手だけだけどだんだん中小もそうなっていくのかな。
なんで強気になったんだろ。
人件費が高騰して会社もどうにもならなくなったんだよ。で採算とれないマンションを切るようにしたら、こんどは逆に管理組合のほうが管理会社に甘くなっちゃってさ。
捨てないでー、みたいな?
そんな感じ。人は逃げられそうになると追いかけるんだ。それでますます管理会社も強気になっちゃって。
調子にのってるんだ。
別に追いかけなくていいと思うんだけどね。管理会社なんていっぱいあるんだから変えちゃえばいいんだよ。
図に乗らせるな、と。
会社によって強気なとことそうでもないとこがあるんだ。いちばん強気な会社だと、もう実際のところ価格交渉なんてできないものと思ったほうがいいぐらい。
例えばどこが強気なの?
住友がいちばん。あとは東急、長谷工、三菱の外様物件・・最近は日本ハウズイングも少しそんな感じかな。
下げてくれないんだ。
値下げを拒否するどころか、じゃウチは降りますよって言われるかもしれない。 いちどウチがコンサルに入ってすぐのタイミングで、住友が嫌がって降りちゃってリプレイスすることになった。
あらら。
今は管理会社の方から値上げを提案してくる時代なの。 だから値下げの打診をするのも、そんな気楽にやっていいことじゃなくなってきてる。
やぶへびになっちゃうかもよ、と。
うん、昔はとりあえず管理会社と交渉って感じだったんだけど、今は意味が重い。他の削減手段・・電気料金の削減とか・・のほうが手をつけやすいかもしれないね。
じゃやらないほうがいいの?
強気な方針の会社と交渉するなら覚悟が必要ですよ、と伝えるようにしてる。つまり下がらなかったときはリプレイスをする覚悟、ってこと。
こっちもそこまでしてやりたくないかも。
そうなんだよね。そう伝えると多くの管理組合が怖がってやめちゃうんだ。
厳しい時代ですな。
うん。でも本当に強気なのは大手の一部だけだよ。まだ今のところはね。
2.マンションの保険を見直す
管理費削減の第2弾。
マンションが加入している保険契約を見直すことで、支出を減らせることがある。
マンションって保険に入ってるんだ。
なんの保険?
火災保険とか施設賠償保険とか。
地震保険は少ないかな。
で、それをどうしろっての?
例えば火災保険の契約を5年しばりにして、そのかわり掛け金を安くしてもらうとかね。
けっこう安くなる?
10〜15%安くなることもあるかな。
そんなに大きな額なの、それ?
大きなマンションだと年に1000万かけてるところもあるからね。
ほう。
もちろん、しばりを受けるから、いつもお勧めというわけじゃないけど、検討してみるのもいい。
検討してみるよ。
あとは付保割合を見直すこともある。
なぁにそれ?
要するにマンション全体の価値の何%まで補償してもらうかってこと。 当然、多くのリターンを望むなら、掛け金も上がる。
じゃ何%にしとけばちょうどいいの?
それは一概にいえないけど、例えば鉄筋コンクリートのマンションが、火災で80〜90%を焼失することが、現実にありえるのかって話じゃないか。
話じゃないか。
だったら火災保険の付保割合を60%くらいに下げるのも、あながち間違ってるとはいえないと思う。
思う。
それと同じような話で、保険の免責金額を上げることで保険料を減らせることもある。
免責金額って?
免責金額を上げるってのは、要するに事故が起きたときにもらえる保険金の額を下げるってこと。
もらえるお金が減っちゃうの?
まぁそういうこと。マンションの過去5年程度の事故率を確認して、事故率が少ないマンションなら免責金額を多少あげてもリスクは少ないと思う。
そんなもんですか。
でも実をいうと、今は保険料がすごく値上がりしててさ、以前の1.5〜2倍くらいになってるのよ。
なんでも値上がりしてますからな。
だから保険料の見直しをしても、その値上げ幅をせいぜい2〜3割に抑えますとか、そういう話にしかならないのが現実なんだ。
けっきょく上がるんだ。じゃつまらないね。
前は築年数は掛け金に影響しなかったんだけどさ、今は考慮するようになっちゃって。だから古いマンションなんかもう大変。
そういう時代ですな。この先どんどん悪くなるんじゃないの。
しかも保険を使うほど保険料が上がる仕組みになっちゃってさ、なんでも保険を使って直してもらってると逆に高くついちゃったりして。
それ保険に入ってる意味あるのかな。
最近はもうね、個人賠償責任保険なんかはマンション一括じゃなくて個人で入ってもらうようになってきてるんだ。そのほうが安いんだよ。
3.エレベーター点検業者を変更する
管理費削減の第3弾。
点検業者を変更することで、支出を減らせる場合がある。
点検業者ってなんの点検業者?
エレベーターとか機械式駐車場とか。
安いところに変えるんだ。
うん、順に説明すると、点検業者には「メーカー系」と「独立系」という2つのタイプがあってね。
どう違うの?
エレベーター点検業者について言うなら、メーカー系は要するに、エレベーターを作ってる会社を親に持つ点検業者のこと。業者のほとんどがこのタイプ。この業界は、エレベーターを親が販売して、子が点検をするという、ダブルで利益をあげる構図になってるわけ。
儲かってそうですな。
エレベーターを買えば点検業者がセットでついてくる感じで、わざわざそれを別の業者に変えようと思いつく人は少ない。
でしょうな。
でもメーカー系は、何もしなくても上から仕事が降ってくるヌクヌクした環境にいるから、価格競争の意識が少ない。
高いんだ。だから変えてやれと。
うん。エレベーターの製造会社を親に持たない「独立系」なんて呼ばれるタイプの業者もあって、 彼らは仕事をよそから奪ってなんぼだから、競争意識が高い。
お値打ち価格なのね。
メーカー系に比べて4割ぐらい、
1台あたり年で30万くらい安くなるかもしれない。
でもあんまり安いのも怪しいよね?
事故とか大丈夫かな。
当然そういう心配が出てくる。
4割引きがはたして適正価格なのか、無謀な値下げなのか、部外者にはわからないから。
結局どっちなのさ?
自分が管理会社時代も含めて見聞きした範囲では、独立系に変えてトラブルになったというケースは知らないんだ。 自分が直接に見聞きした範囲では。
じゃ間接的になら知ってんの?
だいぶ前の平成18年に世間を騒がせた、ドアが開いたままエレベーターが動いて乗客が挟まれたという死亡事故、 あのマンションの点検業者は独立系の大手だったそうだね。でもその後の裁判では責任なしとされた。
う〜ん、どう捉えればいいんだろう。
そもそも一度事故があったからすぐに危険ですというんじゃ、バスにも電車にもタクシーにも飛行機にも乗れない理屈になる。
一度かどうかわかったもんじゃないけど。
たしか独立系は全国の数万台のエレベーターを管理してるはずだけど、そのわりに問題になっている印象はない。
実はなってんのかもよ。
古いデータしかなくて申し訳ないけど、国の発表によれば、平成22年12月から24年7月までのエレベーター事故のうち、特定行政庁から報告があったのが31件で、うち死亡事故は14件だったらしい。点検業者が独立系だったかどうかはわからない。
多いんじゃないのそれ。
でもよく調べてみるとそうした事故のほとんどは点検作業中の事故か、昇降機のような運搬用の簡易的なものだったり違法設置されたエレベーターで起きている事故なんだ。
そうなの?
マンションに使われるようなちゃんとしたエレベーターでの利用者の死亡事故は1件もないように見える。
でも毎日乗るものだしねぇ。
当然そういうふうに考える人もいる。 それならそれでいいんだよ。別に無理に変えろといってるわけじゃないし。 こちらとしては独立系が危険だという認識はもってないけどね。
変えたこともけっこうあるの?
小さなマンションだとけっこう経験がある。
大きなマンションだとあんまりやらない。
なんで?
管理費支出に占めるエレベーター点検費用の割合が高くないし、そもそも大きなマンションだと、エレベーターも特注で、点検業者を変えられなかったりするの。
ほう。
ちなみに、いちおう知っておくといいことだけど、 点検業者をいちど独立系に変えてから、もういちどメーカー系に戻したいと思うこともあるかもしれないじゃないか。
うん。
自分の経験の範囲でいうと、そういう場合、メーカー系の業者はFM契約(フルメンテナンス契約)を結んでくれない。
なぁにそれ?
FM契約ってのは、修理とか部品の交換を、何度でも追加費用なしでやってくれる契約のこと。 直したい放題プラン、とでもいえばいいかもしれない。
直したくない放題プランもあるの?
POG契約っていって、直すたびに費用が発生するプランもある。
どっちのプランがお得なの?
理屈のうえでは、エレベーターが新しくてあんまり故障しないうちはPOGにして、古くなってきたらFMにするのがいいはずなんだけど。
なんだけど?
実際にはメーカー系の点検業者は、POG→FMの途中変更を認めない。 FM契約は新築時から、を条件にしてる。 メーカー系はね。 だから最初からFM契約でいく場合が多いんじゃないのかな。
なんで変更を認めないのさ?
認めたらみんなそっちを選んで、儲けが減るからじゃないの?
資本主義ですな。
で、話を戻すと、いちど独立系の点検業者に変えてから、もう一度メーカー系に戻そうとするときも、 やっぱりメーカー系はFM契約を結んでくれないものなんだ。POGじゃないとやりませんって言う。
また意地悪するんだ。
だから点検業者はそんなにポンポン気軽に変えられるわけじゃないってこと。 そこは覚えておくといいよね。
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